お知らせ:持続可能な観光ガイドラインのチェックリストを作りました。ダウンロードして使えますので自己分析などにご活用ください

サステナブルツーリズムの視点からびわ湖大花火大会を考える

夏の風物詩である花火大会は、日本全国各地で人々を魅了しています。煌びやかな花火の光と迫力ある打ち上げ音、そして夏の夜空に広がる美しい色彩は、多くの人々に感動と喜びをもたらします。そんな花火大会の魅力と観光振興の一方で、びわ湖大花火大会における地元住民の反対決議による問題を取り上げ、サステナブルな観光(持続可能な観光)の視点から考察してみたいと思います。

参照:びわ湖大花火に地元が反対決議 高く長い有料席は「公平性に欠ける」(朝日新聞デジタル8月5日)

「びわ湖大花火大会」地元住民の反対

琵琶湖を彩る夏の夜の風物詩である「びわ湖大花火大会」が、4年ぶりに開催されることが決定しましたが、コロナ禍を経て地元住民から異例の開催反対の決議文が出されました。地域の観光振興と地元住民の生活環境との間で葛藤が生じているこの事態について、一体何が起きたのでしょうか。

花火大会は、大津市の大津港一帯から約1万発が打ち上げられ、例年約35万人が県内外から訪れます。しかし、今年は安全確保のために有料観覧エリアを増やすなどの対策が取られています。有料席は大津港マリーナから堂の川までの約2キロに及び、観覧者の滞留を防ぐために目隠しフェンスも設置されます。また、混雑を予想してJR大阪駅や京都駅、三ノ宮駅などのデジタルサイネージや県内の大学にポスターを掲示するなど、周知徹底に努めています。

一方で、地元の中央学区自治連合会は7月20日に花火大会の開催に反対する決議文を提出しました。その理由として、交通渋滞や混雑の問題、ごみや深夜までの騒音による住環境の悪影響、そして有料席の購入が限られることによる公平性の欠如を挙げています。地域の住民からは花火が見えづらくなるフェンスの設置や大規模な有料席エリアの拡大に対する不満が高まっているといいます。彼らは「地元の不快感、拒否感が増した。地元住民は花火大会をテレビで見なさいと言われているようなものだ」と訴えています。

サステナブルな観光振興と地域共生への模索

花火大会は地域の観光を活性化させ、地域経済に寄与する一方で、地元住民の生活環境に影響を及ぼすこともあります。今後の開催においては、地域住民の声を十分に反映させ、開催規模や周辺対策を再検討して、地元住民と観光振興の両方を考慮したサステナブルな解決策を模索する必要がありそうです。

実行委員会は「コロナ禍からの復活という希望の花火であり、予定通り実施したい。来年度以降は地域住民の意見を聞いて、どのようにするか検討したい」とコメントしています。地域の発展と住民の幸福を両立させるために、コミュニケーションを大切にした決定が求められそうです。

持続可能な観光(サステナブルツーリズム)とは、地域の環境・文化・社会経済に配慮しながら観光を活性化させ、長期的に持続可能な観光の実現を目指すというものです。では、どのようなことに配慮していくと良いのでしょうか。

持続可能な観光(サステナブルツーリズム)の実現に向けて

日本版持続可能な観光ガイドラインを参照すると、つぎのようなことが考えられそうです。

  1. 地域との連携強化: 花火大会の実行委員会は、地域住民や自治体と積極的にコミュニケーションを取り、意見交換の場を設けることで、地域の声を反映させるようにすることが重要です。地域住民のニーズや懸念を理解し、それに合った対策を取り入れることで、共生の促進が期待できます。
  2. 環境への配慮: 花火大会の実施による環境への影響を最小限に抑えるため、環境アセスメントを実施し、持続可能な打ち上げ方法や廃棄物処理に取り組むことが重要です。また、再生可能エネルギーの利用やCO2排出削減にも着目することで、環境への負荷を軽減できます。
  3. 観光者の意識向上: 観光者に対して持続可能な行動を促すための啓発活動を行うことが必要です。ゴミの分別やリサイクルの重要性を伝えるだけでなく、地元の文化や習慣への理解を深める取り組みも重要です。

花火大会は日本各地で開催される夏の風物詩であり、その魅力は多くの人々を惹きつけています。しかし、地域の観光振興と地元住民の生活環境との間で葛藤が生じる事例が、大津市だけでなく他の地域でも見受けられるのではないでしょうか。

持続可能な観光(サステナブルツーリズム)を目指すことで、地域の発展と環境保全の両立を実現できそうです。

地域と観光業者が協力し合い、共に発展していく道を模索し、そして実施し続けることが、持続可能な観光(サステナブルツーリズム)であるといえそうです。

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